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◆ 山からの湧き水でそばを食べる ◆

サントリー クォータリーVol.77 SUMMER 2005
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福島県の山里にそばを水だけで食べさせてくれるところがある。まずは、ちょっと大ぶりのそばの実をかじった。口の中でそばのデンプンが糖化していくのだが、クルミを思わせるような滋味を感じた。のし、水そばを食べる。つなぎはなし。コシの強いそばが、くちびるに触れたとき、これはいつも自分が食べているそばと違うことが分かる。ふんわりとしたと言うのは大げさかもしれないが、するするとカドのないまろやかなそばが、やわらかな水に包まれて喉に落ちていく。口の中のぬめりや汚れを奪い取るような感触だ。そばはざらつきが皆無で噛めば砂糖などとは違うほんのりした甘さで、頬の内側が水の甘みか、そばの甘みか迷う不思議さ。これが他では味わえない水そばの醍醐味。
上段●左から山ウドは茹でて身欠きニシンをだしにして漬け込んだ。ワラビは塩漬けを一晩水で塩抜きしたもの。ニシンは山椒をたっぷり漬け込み、ナマスを食べる。
中断●左からゼンマイは冬に備える保存食。手間隙かけて干したものをもどして食べる。きのこはさくらしめじとヒラタケ。フキは春の到来を知らせる。地場物はやはりアクが強い。
下段●左から黒豆の甘煮。漬物は野菜のビール漬け。自家製の刺身コンニャク。これらすべておばあちゃんの手作り。
水、そして山菜でそばを食べる。

さて場所は福島県の西部、新潟県に近い三冠の山都町の宮古地区。38戸の民家があり、13軒がそばを食べさせてくれる。夏から秋にかけて昼と夜の温度差が大きく、水はけのよい肥えた黒っぽい土壌がそば作りに適し、また、水は飯豊山からの伏流水。山肌のいたるところで湧き水の流れがあり、この軟水がそば作りとそばの味をひきたてているのは言うまでもない。まさしく水と生きている人々の傑作ではあるまいか。

宮古地区で水そばを食べるようになったのはなぜか?に対して二通りの説がある。一つは、家で茹でたそばのぬめりを湧き水で洗って食べていた奥方たちが、ちょっとつまんで食べたらおいしかったからである。もう一つは雪で閉ざされた冬にそれぞれの家に集まって囲炉裏端でどぶろくを飲み、その火照った身体にこの冷えた水そばが旨かったから、である。そして水そばには裏山で採れた山菜を素材にした料理の数々が合う。そばがご飯のように進むのである。
そばは自家栽培。そば粉には熱湯と冷水を使い、打ったらすぐ茹でる。そして山からの湧き水にさらす。そばは8月初旬に種まき、10月中旬に実がなる。
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