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絶品!水そば 宮古・いしいのそば


毎日新聞社「サラダハウス」平成11年4月4日号掲載
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  「宮古へ行こう」越谷市神明町にある『いしいのそば』で、その真髄を味わった後、
  話はすぐに決まった。

  『いしいのそば』のご主人、石井辰己さんは、福島県山郡町”宮古”の出身。宮古には農家が
  34軒ほどあり、そのうち13軒が昔ながらの民家の座敷を利用してそば料理を提供している。

  宮古そばは、そばの実の6〜7割程度の粉を用いてつなぎは使わず、そば粉だけで手打ちした
  もので、しかもそばは白く、歯ごたえのあるツルンとしたのど越しが特長だ。

  味の点については、既に越谷の『いしいのそば』で賞味ずみなのだが、気になるのが宮古でしか
  食べられないという”水そば”。これは湧き水で食べるもので、石井さんによれば「水道水では
  どうしても味わえない」そうだ。

  ならば、行くしかないというのがサラダ流。東北自動車道を北上し、郡山JCTから磐越自動車道
  に出て会津若松ICへ。そこから国道121号線で山郡町へと向かった。

  山郡町からは、さらに車で30分ほど山道を分け入ると宮古にたどりつく。話に聞いていた集落
  は、訪れた人々の心をなごませてくれる。


       老夫婦のあたたかなもてなし、そば粉100%の手打ちに感激!

  村の入口にあるのが『いしいのそば・本店』。道路沿いには他に『とのや』『大下』『かわまえ』
  『権三朗』『中村屋』『なかじま』などの看板を出した民家がある。どの民家を選んでもいいわけ
  だが、今回は石井さんの実家『いしいのそば』を予約しておいた。

  迎えてくれたのは、石井さんのご両親、石井民衛さん(75歳)とマサ子さん(72歳)。民衛さん
  によれば、家は120年前に建てられたものだという。



いしいのそば本店の石井民衛さん、マサ子さん夫妻


  毎年3メートルも降るという雪を支えてきた大きな梁、その家の座敷にすわると、遠い旅をして
  わが家に帰ってきたような寛ぎを覚えた。

  膳にはワラビ、コンニャクの刺身、フキ、シイタケなどの山の幸が並ぶ。いろりでは山女魚が焼かれ、
  脂が炭の上に落ちてはぜる音がしている。

  埼玉からの客ということで、ご主人の民衛さんは息子さんが営むそば屋が気がかりなようだ。自家製
  の酒をもってテーブルについてもてなしてくれた。

  「息子さんのそばもおいしくて人気ですよ」
  民衛さんは少しうれしそうだ。深いシワに刻まれたその笑顔が訪れた客を温かくつつみこんでくれる。
  「でも、実家の方がやはりおいしいと・・」
  「そばは同じなんだが、やはり水がねぇ」
  民衛さんは息子のそば打ちの確かさを認めているようだ。

  さて、水そばが来た。冷たい湧き水といっしょにそばがのど越しよく入っていく。それはコシがある
  ないという領域を越えた、そば粉100パーセントそばの味そのもの。よくもここまで練りあげられた
  ものだと感心させられる。

  民衛さんによれば、宮古で13軒の民家がいっしょにそばを提供し始めたのは、今から13年前。
  それまでも何軒かが始めては閉めたりしてきたそうだが、むろん、そばは昔から代々つくってきたものだ。
  雪深く、土地がやせているために、そばくらいしか栽培できなかったわけだ。

  水そばの次は、カツオだしの汁でいただく。途中で汁をあまりつけない方がおいしいことに気付く。
  湧き水で洗った冷たいそばは、もちろん自家栽培・自家製粉、そして人情味あふれる老夫婦のもてなしは、
  やはり格別のものだった。

  庭先に出て見送ってくれた老夫婦の笑顔を見ながら、「また、来よう」そう心から思った。これからは
  山菜採りに、渓流釣りにと、豊かな自然ももてなしてくれることだろう。


※写真は毎日新聞社「サラダハウス」平成11年4月4日号より使わせていただきました。

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